F16 E.SAKAI

 入社後6か月目に上司からの指示が有りました。
「放送局の使用しているENG機器(Electric News Gathering:主にニュース報道に用いられるカメラやビデオのこと)の保守を本社で先行して行ってきたが、今年から全国の支社に拡大する。その担当者の一人として、S社の工場に行って研修を受けて貰いたい。この仕事は、将来、当社に3つ目の柱となる事業を展開する基礎となるので、しっかり頑張ってほしい。」

 突然の話に、「どうゆうこと? 何で私?」等々疑問が噴出。その後不安に駆られましたが、仕事の内容と会社の将来像を聞くにつれ、好奇心とヤル気がみなぎってきました。
考えてみれば、新人から新規事業の先鋒になる事などなかなか無いことですし、内容も以前から興味のあった映像・音声関係ですので、先が楽しみになっていきました。

 研修場所はS社の厚木工場内、その間の住まいは、工場隣の敷地にある通称“S村”と呼ばれてる、寮が沢山集まっていた場所の一角にある研修者用の宿泊施設。
初めて行った時に感じた事は、「敷地が広い」「女性が多い」「なぜか長袖の衣服のうえに半袖の作業服」「結構自由な雰囲気」でした。

 期間は約3か月間。後に補完的な研修が何度も有りましたので通算6か月ぐらいでしょうか。
サービス部門に入り、全国の放送局から集まってくるビデオ機器を、清掃から部品交換、機械的・電気的調整まで行い、規格内に収めていく作業を経験します。
現在の機器の保守は、ほぼ電気的調整のみですが、当時の機器は機械的(物理的)に調整しなければならない箇所が多く、かなり経験値が必要でした。一種の職人で無いとできない様な調整も有りました。

 一連の作業が終わると、最終確認の担当者の所へ運んで検査をして貰います。
研修者だからではなく、社員の方も同様にクリアしなければならないものです。
その担当者は女性社員の方でした。最終検査は女性の方が適任だとお聞きしました。
(現在、こんな事を言うと叱られるかもしれませんが・・・・・)
しっかりと確認され、少しでも規格を満足していない場合には容赦なくNGが出されます。
私も何度かNGとなり、凹んだものです。

 始めに教えられた作業は「定期保守」で、一定時間を使用するごとに、老朽化した部品を変えるものですから、手順通りに実施すれば何とか完了することが出来ました。
しかし、故障修理には苦労させられました。
機械部品の故障修理は、部品を交換すれば復帰するので比較的簡単でしたが、電気回路の場合は、どの部品が壊れているのかを特定するのが非常に難しかったです。
現在では、電気回路が壊れたものは、その部分の基板を丸ごと交換する事で対処されることが多いのですが、当時は、故障した部品(半導体、コンデンサなど)を特定して交換しなければならず、非常に手間が取られました。
回路図を読み、故障の症状から回路を特定し、その中の部品の役割を考えて、波形などを測定器で観察し故障部品を特定する。 いやー大変でした。
研修の試験で故障修理の課題が出されましたが、一番特定するのが難しい回路に細工がされていて、講師の意地悪さを感じましたね。

 主に研修を受けた機器はVTRで、据え置き型の「U-Matic」という規格のものでした。
重量は50Kgぐらいあり、これを一人で持って机から机と移動させるのですが、若いと言え結構大変でした。
後のことですが、ぎっくり腰になりかけたこともあります。

 一連の研修が終わり、各自それぞれの地域に戻ることになりました。
そこからが、苦悩の日々が続くことに。

To Be Continue・・・