~ 自室の小銭が減っていく出来事 ~

当時1桁1万円と言われた頃の卓上型電卓のノックダウン(半完成品)の組み立てをLos Angelesでやる為の技術指導要員として,最初に駐在を開始したのが1972年でした。
英語力は見猿、聞か猿、言わ猿、状態で日本人は私と相棒の二人で難行苦行の毎日でしたが、当時の最先端技術を使った自社生産のLSI チップを電卓に組み込み、完成品にしてアメリカで販売開始した頃の出来事でした。

通勤は自転車、アパートはワンルーム部屋で台所、トイレ、シャワー、洗面、小さなクローゼット棚だけの小部屋一室でした。
仕事を終えて部屋に帰ってくると小銭を大瓶の中に入れて貯めていたある日、そのコイン量が増えず、減っている事に気がつき、最初は気のせいかと思っていましたがやはり減っている事が確信出来たので、棚のドアを開けると中に仕掛けた小型カメラのシャッターが自動でオンする様にソレノイドをセットしていたら数日後、見事に窃盗者の顔写真が撮れ、直ぐに現象しました。
なんと、窃盗犯はアパートのマネージャーの娘16歳でした。

証拠写真を持ってマネージャーに今まで盗んだ金を返却する様に話すと激怒して平手打ちされたので自室に逃げ帰り、すぐに警察(#911)に電話をかけ、『I need your help!』と言うと、すぐにパトカーが来て、まるで映画に出て来る様なカッコいい二人の警官が私の部屋に入ってきて事情聴取され、既に激減しているコインの入ってる大瓶(外側は綺麗に磨いていた)とカメラ、写真を見て説明すると警官はすぐ無線で鑑識係官を呼び寄せました。

2インチ幅程度のテープを黒粉のまぶした瓶の周りにはりつけて指紋を採取して用紙に転写後、私に『You did a good job!』と褒めてくれました。
説明では1〜2ヶ月以内に裁判所への出頭要請が届いたら出頭する様に言われました。
同時に、もう一人の警官は娘の両親であるマネージャー室に行きました。

2ヶ月後に保護観察局に行くと娘の父親が私を見て『このジャップ野郎!』と言って睨みつけました、、
そうです。この時代はまだこの様な差別言葉が飛び交う時代でした。
私は『言葉が出来ないから証言出来ない』と言うと当時の警官が『問題ない、私が説明するから心配無用、貴方はI Dと名前、生年月日、住所(すぐ他のアパートに転移していた)の確認だけでOK』という事で、罪状は未成年でプロべーション(保護観察)6ヶ月の結末でした。  
怖かったですがヤッター感が最高の日でした。

追記:当時は説明をしなかったですが自室に入っていたのは娘と母親だと確信していました。
   理由はシーバス酒も倍速で激減していたからです。

サカ 記、E5期生